クール・フュージョン

 未来の科学史が記述される際、C.ルイ・ケルブランの名前はガリレオ、ニュートン、アインシュタインの名前と同等に位置づけられるかもしれない。1950年代、フランス人生化学者のケルブランはフランス政府の命でサハラ砂漠でのあるプロジェクトに関わっていた。極難の状況下で油井を掘削している労働者の一団を調査することが目的だった。真夏の炎天下での長時間労働は身体の水分を枯渇させる可能性があることは十分知られていたが、暑さに苦心しながらも労働者は何ら明らかな病状を示さず、日蔭のない鉄板の上で働いていた。6カ月間、ボランティア・チームは労働者が摂取・排出したもの全てを注意深く記録した結果、熱が高まるにつれ、労働者は摂取した以上のカリウムを発汗により体外に排出していたことが分かった。また、彼らが労働中、錠剤の形で余分に海塩を摂取していたことも分かったが、その追加摂取した塩は完全に排出されてはいなかった。但し、最大の疑問は取り込んだエネルギーと発熱という形で排出されたエネルギーとの間の熱量値の乖離だった。食事と太陽への露出を通じ、労働者は平均して毎日4,085カロリーを摂取した。同時に、彼らは1日、4.12リットルの汗を出しており、発汗にはリットルあたり540キロカロリーを必要とした。算数の等式によれば、これほどの大きな不均衡があれば労働者は低体温症で死んでいたはずである。

 ケルブランは次の様に説明している。「カリウムに転換することで消失したナトリウムが吸熱反応を発生させたという結論に至りました。従って、乾燥した暑い国では直観的に多量の塩が摂取されるため、アフリカ、中東などの国では塩が重用されているのです。キャラバンが1,000キロもの距離を移動し塩を持ち帰ってくるのはそのためです。」現代化学の基本的な考え方と矛盾するが、追加的に行われた実験ではナトリウムがカリウムに転換したことを確認した。事実、「有機体に真新しいナトリウムが注入されると、毎回それはすぐカリウムに転換する。」

 ケルブランは自らの発見を科学雑誌に発表し、それは現代マクロビオティックの創始者である日本人の自然哲学者・桜沢如一(ジョージ・オーサワ)の目に留まった。桜沢は直ぐにその意義を理解しパリを訪問、ケルブランに会い、彼の研究を本に書くよう促した。それは「生体による原子転換(Biological Transmutations)」とその後出版された「自然の中の原子転換(Natural Transmutations)」、その他の著作に結実した。

ケルブランは低エネルギー核融合という新興科学を「生物学的原子転換」と命名した。後に生理学分野のノーベル賞にノミネートされたケルブランは、自然界、特に植物や動物の個体内では、低エネルギー核融合を通じ元素が結合し新しい元素を生み出していると提唱した。原子転換は低温、低圧、低エネルギーの状況下で2つの原子核が融合することで発生する。ケルブランは、二つの「原始(genesis)」元素を自然な環境の下で融合させることで新たな「子孫(progeny)」元素が誕生すると考えた。例えば、次のような仮説が挙げられる。

 

・ナトリウム(Na)と酸素(O)の低エネルギー核融合を通じカリウム(K)が生成される:

11Na + 8O 19K

 

・炭素(C)と酸素(O)の低エネルギー核融合を通じケイ素(Si)が生成される:

6C + 8O 14Si

・カリウム(K)と水素(H)の低エネルギー核融合を通じカルシウム(Ca)が生成される:

19K + 1H 20Ca

 東京に戻った桜沢は研究室で原子転換を証明するつもりでいたが、どのように進めていけばよいのか途方に暮れていた。実験モデルの確立に失敗を重ねた後、桜沢はその解決策が見つかるまで7号食と瞑想に入った。

ある晩、彼は夢を見た。空の雲の合間から大きな手が表われ、指の先から稲妻が走り、目も眩む明るさで地表に落ちた。稲妻が地面を打つたびにそれは爆発し、新しい元素を生成した。桜沢は夢から覚め、問題の答えを発見した。原子転換を起こすためには電気が必要だということを。

 桜沢は友人である一流大学の教授と連絡を取り、実験装置を設置するための協力を求めた。ごくシンプルな道具を使い、真空管の両極にそれぞれ陽極と陰極の電極棒を取り付けた。電極に電線を付け、真空管内に2.3mgのナトリウムを入れ、その真ん中に酸素を含んだ電球を設置した。電線に電気を流し、暫くするとナトリウムは溶解し液体、気体へと変わり、最終的にプラズマ状態に変わった。真空管の前にプリズムを置くとナトリウムから放たれる波長の投影色であるオレンジが観察された。その時点で電球の弁を開け、真空管内に酸素を注入した。伝統的な東洋の哲学を理論的基礎とすると、ナトリウムは陰性(柔らかく、拡散的)な酸素と比べ陽性(固く、凝縮的)であるため、2つの元素間で核融合が起こったことになる。化合物内の場合とは違い、2つの元素は結合せず、代わりに互いの原子が融合し新しい元素を生成した。その瞬間、プリズムを通じて放たれた色がオレンジから紫に、陽性から陰性に変化した。実験の結果、2.3mgのナトリウムと1.6mgの酸素を融合させることで3.9mgのカリウムが生成されたのである。

 

 この実験によりケルブランが調査した労働者が体内でナトリウムをカリウムに変換できた方法が説明できた。彼らは塩という形でナトリウムを摂取していた。酸素は大気中に豊富にある。労働者が懸命に働き激しく呼吸していたとすれば、体内には大量の酸素が充満していたことになる。彼らは若く、活動的で、暑く陽性な環境下で激しく陽性な仕事をしていた。彼らの身体は真空管を通し放電された状態に類似した非常に高い電磁場エネルギーで満たされていたのである。自然界の根本的な原理の一つに、極限状態では陰性は陽性に、陽性は陰性に転換するというものがある。様々な要因が合わさった結果、彼らの体内でナトリウム(陽性)がカリウム(陰性)に変化した。その後、桜沢は続けて革新的な実験を行い、炭素から鉄を作りだし、微量だが金やプラチナなどの希少金属を作りだした。

 

(『クール・フュージョン』26~28ページより引用)

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